Q211 設計事務所におじゃましていいですか。
設計事務所に電話して、気持ちが合いそうな建築家がみつかったら、事務所に行ってみましょう。ハウスメ−カ−なら住宅展示場があります。が、建築家にはありません。 ショールームもありません。建築家にとっては仕事場がそれに代わるものです。仕事場は建築家の人柄を表しています。その建築家の建築に対する考え方、仕事の進め方、その他いろいろなことを知ることができます。 電話よりも詳しく話が聞けます。ゆっくり時間をかけて話し合いましょう。世間話、趣味の話、住宅設計と直接関係ないことでもお互いを知り合う材料になるでしょう。百聞は一見にしかず。事務所を見ていただくのが一番です。仕事の話は意気投合してからでいいのです。その日に決めなくてもいいのです。ゆっくり考えてください。
Q212 何度電話してもつながらないが。
もう一度、何度もかけなおしてください。留守の場合が多いのです。住宅の設計事務所は小人数のところが多いのです。一人の場合もあります。建築家は外出していることも多いのです。現場に行ったり、依頼主のところに打ち合わせに行ったり、役所に行ったり、研究会とか見学に行ったリ。朝よりも午後のほうがいいかもしれません。朝の遅い人がわりといます。そのかわり夜遅くまでいる人もたくさんいます。また、アルバイトの人などが応対に出た場合、話が通じにくい場合があるかもしれません。そういう時でもあきらめずに何度も連絡をしてみてください。
Q213 なにを準備して伺えばいいですか。
普段着で、気楽に訪問しましょう。まず電話で会う日時を約束してください。事務所の大小や、かっこよさで判断しないこと。住宅設計は、儲け商売としてやつていけるものではありません。建築家は建築への熱い想いで仕事をしています。一人でやっている建築家もたくさんいます。事務所の経営などにわずらわされずに、自分の納得のいく仕事がしたいからです。
初めて訪れたとき、次のようなことを建築家に聞いてください。 その建築家が住まいについてどんな考え方をしているか、どんな住まいをつくろうとしているか、どういうことに関心をもつているか。仕事の進め方や設計期間など。設計報酬。これは大事なことです。遠慮なく聞いてみましよう。それ以外にも、設計契約について、内容、仕事の範囲、いつごろ契約するか、どういう形式か。主宰者あるいはパ−卜ナ−がどこまで見るか。基本設計の段階では?実施設計の段階では?工事監理の段階では?など
Q214 建築家に設計依頼をしたけど、私のいう通り設計してくれない。
あなたが建築家に住宅の設計依頼をする時、何を期待するのでしようか。あなたのいう通りの図面を描いてもらうため、建築確認申請手続きをしてもらうため、という実務代行者として依頼するのでしようか。もちろん、そういう業務も設計という行為の一部ですが、実はもっと大切なことがあるのです。
建築家は設計という行為によって、実利、実用を満たした上で、さらにそれ以上の「何か」を作ろうとしています。豊かな空間、美しいもの、精神の交歓や感動、そんな「何か」を作るものの中に込めたいといつも考えています。あなたが建築家に設計依頼する時に第一に考えていただきたいのは、そんな「何か」を求めているか、ということなのです。あなたのいう通りの図面を描かないかもしれないのは、あなたに「何か」を提供したいと考えているからなのです。だから建築家は自分の表現だけに力を入れて、私のいうことを聞き入れてもらえないのだ、という危惧を持たれるかもしれません。そこで互いの理解と信頼関係が問題となります。すでにそういう関係が成り立っている建築家に設計依頼を行なうのが理想かもしれませんが、実際は初対面からはじまることがほとんどです。その場合、建築家は初対面のあなたの人となりや、生活感、好み等を会話の中で探つています。あなたも建築家に対してそうするでしょう。互いに理解と信頼関係を持ち合えるきっかけをつかむように考えているはずです。具体的な間取り等の話をはじめるのはそのきっかけを確かめた後で良いのではないでしようか。この段階でそのきっかけをつかめず、設計依頼が行なわれない状況が発生するかもしれませんが、それは実は良いことなのです。あなたは他の建築家に会いに行き、信頼できれば設計依頼を行なえば良いのです。互いの理解と信頼があってこそ活発な意見交換が成立します。そしてそのことが、建築家は独り善がりで私のいうことを聞き入れてもらえないのでは、という危惧を解消することになると思われます。
Q215 早く設計してもらって、早く住みたいのに、建築家に頼むとどうしてこんなに時間がかかるの。
設計に3〜6か月、施工に半年〜1年程度、もちろん構造や規模により異なるのですが、多分あなたの予想外の時間がかかります。プレハブ住宅の場合など依頼後2〜3か月で完成という場合もあるのですから、確かに時間がかかっています。なぜでしようか。これは例えば、洋服のレディメイドと仮縫付のオーダーメイドの差と考えられないでしようか。あなたと建築家が出会い、あなたの生活、要望、予算、その他種々の条件を見極め、どのように設計に盛り込み実現してゆくか。度々の打ち合わせにより仮縫のようにあなたにフィットさせてゆくか。そんなことを考えてみれば短時間で「いっちよう上がり」という訳にはいかないことを理解していただけるのではないでしようか。「ひとつしかないもの」を作ってゆくのです。モデルプランの選択や和室を洋室に変更すれば、はいできあがり、ということではないのです。「建築家に設計依頼する時に何を期待するか」ということを考えていただければ、そのために必要な時間は充分に取るべきなのです。それがあなたのため、あなたの実現したい「家」のための懐胎から出産までの大切な時間なのですから。
Q216 プレハブやメーカー住宅に比べ、建築家に頼むと坪当たり単価が高くなると聞きますが、本当でしょうか。
例えば、キッチン設備、照明器具、家具、造園等は別途工事とし、単純化されたプランや空間の住宅を作るのならば安価にできるでしよう。しかしそうしても後々生活をはじめる時、不足している物を購入、設置する費用が掛かります。また、何度も述べてきた「何か」を手に入れることができないかもしれません。建築家はできる限り総合的に考えて必要なものは設計の中に盛り込もうとします。施工の請負金額は多くても、それだけの内容があれば決して割高であるとはいえないのです。どのようなプラン、空間で、どんな材料を使用し、設備、家臭、その他備品類はどれだけ含まれていて、門やアプローチ、植栽はどうなっているかなど、いろいろな基準を合わせて比較しなければ、高い、安いを論じることはできないのではないでしようか。建築家もローコスト住宅に取り組みます。その時考えることは、安価であっても住宅に求められる基本性能や空間を確保し、それ以上の「何か」を付加したいということです。あなたも自分の住宅に必要なものと、余計なものとを考え、必要なもの、大切なものについて建築家との一致点を見つけて下さい。それがローコス卜を安物にしない秘訣です。
Q217 建築家は、その家だけではなく近隣のことも配慮するっているけど、どういうことなの。
あなたの隣家が工事をはじめた時、あなたは「どんなものが建つのだろう。日照は、プライバシーはどうなるのだろうか」という心配が頭をもたげるはずです。あなたが家を建てようとする時も、隣の方は同じ心配をされているのだと考えてください。あなたが家を建てようとする時、近隣に配慮するのは当然のことだと思われます。あまりにも近隣に対する配慮を欠いた計画を行なうと、近隣とのトラブルの原因となります。思慮ある建築家が計画を行なう場合には、できる限り近隣との日照、通風、プライバシ−などの相互確保に留意するはずです。そのことによりこの種の卜ラブルは未然に防止できると思います。しかし、あなたや建築家側にそういう配慮がなく、自分勝手な計画を強引に行なおうとする場合にはトラブルの発生となるのでしよう。良識のある建築家はそういう計画に対して反対するはずです。あなたが「個人の住宅といっても、近隣や、地域、社会とまったく無関係に成り立つものでな<、社会的な視点でも考えるべきもの」であることを理解し、建築家との意見交換の中で考え、近隣や社会に対する配慮を忘れなければ、原因がないのですからこの種の卜ラブルの発生は防止できるのではないでしようか。